大判例

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横浜地方裁判所 昭和25年(行)4号 判決

原告 宗教法人 皇道治教救民自治党本庁

被告 横浜地方検察庁検事正

一、主  文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告は「被告は原告に対して昭和二十五年二月十一日差押命令による別紙目録記載の押收物を返還せよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求めた。

三、事  実

原告は宗教法人令に基いて設立した法人であり被告は檢事として昭和二十五年二月十日横浜地方裁判所裁判官遠藤吉彦発布の搜索差押許可令状によつて、被疑者木舟傳三に対する飮食営業臨時規整法違反及び教唆被疑事件について昭和二十五年二月十一日原告事務所で請求趣旨記載の物件を押收した。しかし右によつて押收した物件は何れも原告の所有であり右木舟は前記罪名にあたる行爲をしたことはないから被告の右押收処分は違法であり、前記押收物件の返還を求めるため、本訴請求に及んだと述べ、

被告は本案前の答弁として原告の訴を却下するとの判決を求め、本訴請求は刑事訴訟法第四百三十條により不服申立をなすべきであつて民事訴訟手続により訴を提起することのできないものである。

次に本案について請求棄却の判決を求め、請求原因事実中原告がその主張のような宗教法人である事実、搜索差押許可状に基き木舟傳三保管の原告主張の物件の差押をしたことは認めその余の事実は否認すると述べた。

四、理  由

原告の本訴請求はつまるところ檢察官のなした押收処分を不服としてその押收物の返還を求めるというのであるが、右の処分については刑事訴訟法第四百三十條第一項により刑事訴訟手続によりその救済を求めるべきであつて、同條第三項により行政事件訴訟として民事訴訟手続によりその救済を求めることができないものであるから、原告の本訴請求は本案の当否について判断する迄もなく不適法として却下し訴訟費用は敗訴した原告に負担させる。そこで主文のとおり判決する。

(裁判官 牧野威夫 荒木大任 樋渡源藏)

(目録省略)

原告 平木静江 外一名

被告 笠岡税務署長

一、主  文

原告等の訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訟訴代理人は、被告が昭和二十三年九月十七日訴外石井益夫に対し爲したる差押物件中原告平木靜江に対し別紙第一目録記載の物件原告石井照海に対し別紙第二目録記載の物件の差押を解放すべし、訴訟費用は被告の負担とす、との判決ならびに仮執行の宣言を求めた。

三、事  実

被告は訴外石井益夫に対し税金の滯納があるとして、昭和二十三年九月十七日原告等の居宅において別紙第一、第二目録記載の物件その他の物件を差押えた。右訴外人と原告等とは居宅を異にし、又世帶も違い、原告平木靜江は世帶主で原告石井照海はその家族であつて、右差押物件中別紙第一目録記載の物件は原告平木靜江の所有物であり、別紙第二目録記載の物件は原告石井照海の所有物である、しからば訴外石井益夫の滯納税金の爲に原告等の所有物を被告から差押えられる理由がない。よつてその解放を求めるため本訴請求に及んだと陳述し、なお本件は被告がなした本件物件に対する前記差押処分は違法にして当然無効であり原告等は各その所有権を不法に侵害せられたので所有権に基き民事訴訟手続によりこれが回復を求めるものであつて行政訴訟ではない。原告等は本件差押処分の無効確認又はその取消を求める意思はなく、又被告を国に訂正することはしないと釈明した。

被告指定代理人は原告等の請求を棄却する、との判決を求め、原告等主張の事実中被告が原告等主張の日時、場所においてその主張の如き物件を差押えたことは認めるが、該物件が原告等の所有物件であることは否認する。被告の爲した右差押の執行は訴外石井益夫に対する租税の滯納として、国税徴收法に基き差押えたものであつて、右差押物件は右訴外人の財産と認定して差押えたものであると述べた。

四、理  由

原告等は本件訴訟は行政事件訴訟特例法による訴訟ではなく、民事訴訟法によるものであるというので職権をもつて本件訴訟の被告である笠岡税務署長馬場茂が民事訴訟による本件訴訟において被告たるの適格を有するものであるか否かについて考えてみるに、凡そ民事訴訟において当事者適格を有する者は原則として訴訟物である権利又は法律関係の存否につき対立せる利害関係実質的帰属者をいうのである。しこうして税務署長は国を代表して租税に関する公法上の行爲をなすものであるがその行爲主体は国であつて行政官廳である税務署長ではない。故に本件訴訟の訴訟物たる権利又は法律関係につき原告等と対立せる利害関係の実質的帰属者は国であつて行政官廳である被告笠岡税務署長馬場茂ではない。即ち被告笠岡税務署長馬場茂は民事訴訟による本件訴訟において被告たるの適格を有するものではない。從つて国を被告となさず行政官廳である笠岡税務署長馬場茂を被告となした原告の本訴は爾余の爭点につき判断するまでもなく既にこの点において不適法であり却下を免れない。

よつて訟訴費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、第九十五條を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 中島貢 菅納新太郎 辻川利正)

(目録省略)

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